みどりふぐの観察日記

広い心で読んでください。リズと青い鳥、響け!ユーフォニアムに関する考察、感想をひたすら述べるだけの突発性ブログです

思春期の少女が傷つく姿の美しさ

 

こんばんは。前回の記事、予想以上にたくさんの方にご覧いただいてて嬉しいです!ありがとうございます。

 

先日、リズ鑑賞7回目にしてやっとやっと希美の目線で観てみました。
希美の目線で観るのって今までずっと怖くてあえて避けてきたというか、希美がこの映画の中でもうあまりにも可哀想すぎて希美に感情移入して観たらまともに人間の形保って帰れない気がしてたので避けてたんです。

 

案の定無理でした。

もうこれから彼女に起こる全ての事象を知る私は「なにこれ!めっちゃ青〜〜い!」の時点で心が溶けて死にそうでした。

傘木希美という女の子に見えてしまった表と裏、それがあまりに等身大の女の子で、とても愛おしくて、傘木希美という女の子を好きにならざるを得なかったので、今回は「希美の人間らしさ」について書いていきたいと思います。よかったらお付き合いください。

 

 

 

ナチュラルボーン自信家がたまに顔を出す

明るくいい子、強豪校の部長になるくらいみんなの信頼も厚い。さらにフルートの技術もある。そうやって生きてきた希美は「色んなもの持ってる」「自分で自分のことをトクベツだとちょっと思ってる子」だったと思います。そして多分自覚があります。
いやいやあの鈍感の代名詞・傘木がそんなはずはとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが実は、「ちょっと傲慢なくらいの自信家」なのと、それに付随した「ちょっとみぞれ見下してる説」までもちょいちょい言葉に出ています。検証していきましょう。

 


①「なんかこの話、私たちみたいだな」

こちらのセリフ、おそらく物語開始10分くらいですが。傘木さん飛ばしてます。
2人が読んでいるのは、ひとりぼっちのリズとそこにやってきた青い鳥の話。おそらく2人とも、中学時代の自分たちを絵本と重ねています。
みぞれ側がこれをいうならまだ分かりますが、「ひとりぼっちだったみぞれの生活を私が楽しく【してあげた】んだから!!」みたいな自負がないとこんなこと口に出来ませんよね。

 


②みぞれをあがた祭りとプールに誘うシーン

まずあがた祭りのシーン。

 

のぞ「みぞれは誰か誘いたい子いる?」
みぞ(首を振る)
のぞ「…そっか!」

 

ここ、顔は見えてないんです。でも指先で机のふちをこつこつっ、と触るんです。いつかの舞台挨拶で希美役の東山さんも言及されてましたが、「そうだよね、みぞれならそうだよね。いないって分かってたけど聞いてみただけ。」って気持ちだろうなと。質問ではなく、ただの確認ですよね。

しかしプールのシーンでは違いました。
聞いてもないのにみぞれが自分から「他の子も誘っていい?」と聞くんです。顔が固まるも一瞬で
「へーみぞれがそんなこと言うの珍しいじゃん!いいよ。誰?」といつもの調子に戻してますが、完全に声が笑ってねぇ。あれが黄前久美子の口だったら全然よくねぇよって返してそうでしたね。あぶねぇあぶねぇ。
自分の知らないところで、「私にしかなつかないみぞれちゃん😀」が自分以外の世界を知ろうとしてるんです。傘木さん、ちょっとジェラシー感じてます。この子にも、そういうマインドがあったんです。


さて、もう1つ説を立証するための大事なシーンを紹介する前に、おさえておきたい大切なポイントを紹介しておきたいと思います。

 


とにかく「吹奏楽が好き」「フルートが好き」

大前提なんですが。好きすぎてたまに周りが見えなくなってますよね。でもこの部分がなければ、辞めたはずの吹奏楽部が府大会を突破して関西大会さぁ頑張るぞ!ってメラメラしてる時に「私戻りたいんです!」なんて言いに来れませんよね。そりゃ田中あすかも怒るわ。
リズと青い鳥に関しても「この曲、卯田さんがつけたんだよ!卯田さんいいよね〜〜」と、吹奏楽の有名な作曲家さんにも明るい様子。好きなんだねぇ吹奏楽
でも、だからこそ、次のセリフが痛いんです。

 

 


③「私、普通の人だから。みぞれみたいにすごくないから」

 

完全にダウト。痛すぎる。やめて!もう観客のライフポイントはゼロよ。
この言葉1つで「自分で自分はちょっとすごい女の子だと思ってた」ことと「ちょっとみぞれ見下してる説」が完全に立証されてしまってるんです。
この台詞、どこからどうとっても僻みなんですよ。
すごく誇張して言うと、「私がすごくてみぞれが普通の子だったはずなのに、違かったわ〜〜!」なんですよ。いじけてるんです。


引っ込み思案で友だちも少ない、希美がいないと何も決められない。オーボエの技術は一級品だったとしても自分に自信なんか全くない。
受動的に吹奏楽を始めて、「希美がいるからやる」「希美が行くから行く」「楽器だけが私と希美を繋ぐものだから」で続けてきた。
そんな、「私が楽しくしてあげた」「私より友達いない」「私がいないと何もできない」みぞれちゃんが、まさか自分より遥か上にいたなんて。
しかもトクベツだと思ってた自分はトクベツなんかじゃないと思い知らされる。普通の人。それで見下してた子に抜かれた。

 

あの頃の世界って、「部活の技術」ってすごく残酷なものさしとして確かに存在してたと思います。それが希美にとってはすごくすごくすごく大きな存在。上述した通りフルートと、吹奏楽が大好きだったから。
薄々感じてたけど、まざまざと見せつけられてしまった。 希美の負けん気の強さを思えば、どれだけ悔しかったかなんか自明の理ですね。

 

希美は吹奏楽が好きでフルートが好きで、「卯田さん」も知ってて、みぞれを誘ったのも希美
でも才能があったのはみぞれ。受動的に吹奏楽を始めて、「希美がいるからやる」「希美が行くから行く」「楽器だけが私と希美を繋ぐものだから」で続けてきたのに、新山先生に声をかけられたのはみぞれだけ。

あの生物室のシーン、希美は「正直ちょっとみぞれが重い。ずるい。嫌。」くらいまで来ちゃってますよね。
自分が誘わなければみぞれがオーボエを始めることはなかったのに。こんな気持ちになることはなかったかもしれないのに。 だから「ごめん、それよく覚えてないんだよ」。いや覚えてねぇわけねぇだろと。
希美が辞めたことでみぞれを傷つけたこと、わかってる。夏紀に相談したときは「あの時のこと、根に持ってたりしないかな…」だったけど、この時は「未だに根に持ってるの?」とでも言うように「昔のことでしょ」
その希美の「もうやめて」のSOSとも取れるその言葉が、あまりにも痛すぎて、あのシーンは本当に希美に感情移入して観たら死ぬ。
そりゃ悔しいし自分に嫌気がさすし泣くし嫌な言葉ばっかり使っちゃうよね。

 


テレビアニメでの希美はマジでただのいい子だったんです。
でも、マジでただのいい子って正直怖くないですか。

誰にでも人あたりよくて前向きで、何に対しても笑ってて、「すごーい😊!いいね〜〜✨👏!」しか言わない子って不安になりませんか。胡散臭いというか、そんなわけないですよね。スーパーネガティブの私にとって、そういうマイナスの感情母親の子宮に置いてきたんかみたいな人間は恐怖のレベルです。私は久美子みたいな子の方が人間らしくてよっぽど安心します。
でもあのシーン、今までずっと蓋をされてきた希美の「嫌な子の部分」が爆発してて、人間らしくてとても好きです。安心できます。

 

でも(前回も書きましたが)希美は、そんな自分を「軽蔑されるべき」と言うんです。「みぞれにこんな感情を抱いてしまう自分は最低」だと思ってるんです。やっぱりいい子なんですよね。

 

 

ふりむくな君は美しい

おそらく希美の人生って、中2位まで結構順調だったと思うんです。
所属してる吹奏楽部もつよく、その部内でも技術を認められてた。明るく人気者、みんなの中心人物。部長を務めるほどの人望もある。
しかしそれが中3でコンクール落ち、高1で辞めた部活が高2でめきめき力をつけて府大会を突破。自分の行動を後悔し、部に戻るも高3で親友に負かされる。
おまけに3年になる前部長に指名されたのは、中学では自分だったのに高校では優子(一度辞めたから当たり前だけど)。
この3年で自尊心が驚く程ボキボキに折られている。

 

でも私は希美みたく順風満帆できた子ほど折られて成長する姿はめちゃくちゃ美しいと思います。控えめに言ってわたしはドドドドクソ性癖です。

頑張って一皮剥けて素敵な女性になってほしい。

 

この真っ直ぐで優しくていじらしい女の子が、どうか未来で報われてほしい、と願うばかりです。